今日で1月が終わります。皆さまにとってどんなひと月だったでしょうか。
私にとって例年1月は、立春や旧正月までに必要な浄化期間であることが多く、今年もそんな風に過ごしました。
特に今年は放射線治療が終わって間もないこともあり、心身ともに疲れやすい日々でした。
そんな時、12月にご紹介したジル・ボルト・テイラー博士の著書「Whole Brain, 心が軽くなる『脳』の動かし方」(NHK出版)の前編ともいうべき
「奇跡の脳」(新潮社)を読みました。
この本は、テイラー博士が脳卒中になってどのような状態に陥ったのか、そこからどのように回復して今を過ごしているのか、について書かれています。
特に後半部分は、脳がネガティブ思考に陥った時の立て直し方について書かれており、マインドフルネスの観点からも素晴らしい内容だと思いました。
本書は、前半と後半で内容ががらりと変わります。
訳者の竹内薫さんの言葉によれば、前半は「脳科学者の目から見た脳卒中の発症と手術とリハビリの様子」、後半は「『右脳マインドのススメ』というべき内容」について書かれています。
著者のテイラー博士は、脳卒中になった当初、科学者としてのキャリアのみならず、読む・書く・話すなどの左脳のほとんどの機能を失いました。
右脳のみが機能している状態で、大変なリハビリが必要でしたが、心の中はあらゆるストレスから解放され至福の状態だったそうです。
リハビリが進むにつれ、左脳の機能を少しずつ取り戻しましたが、一方で、左脳のネガティブな側面=不快な感情、マイナス思考に陥ることのないよう、思考と感情の状態を見つめ、ネガティブなものは変えていく努力をしたという内容が書かれています。
著者によれば、怒りや苛立ち、恐怖などの感情は、左脳で生じる「思考パターンのループ」=パターン化された神経回路によって発生しています。
思考パターンは、善悪や正しさを判断するような、批判的な分析に紐づいています。
このループは左脳を使っていると自然発生するものですが、その結果生まれる感情に振り回されていることに著者は気づきました。
また、ある感情を感じた時に、からだの感覚を意識するようにすると、意地悪な気持ちになったり、不安になっている時は、呼吸が浅くなったり、頭痛がしたりしていることに気づいたそうです。
そこで、どんな時も宇宙とのつながりを失わず心の安らぎ(愛、喜び、感謝)を感じるように努めるようになりました。
著者によると、脳内でこの自動回路が引き起こされるとき、90秒以内に化学物質が体内に満ち渡り、血流から物質が消えます。
ということは、90秒経てば自動的な反応は終わるはずなのに、それ以上続いているとするならば、その回路が機能し続けるよう自分自身が選択し続けているのだそうです。
そこで著書は、自分の体験をどうとらえるかは、自分次第であることに気づき、不快な感覚が始まったら、90秒はじっと我慢し、その後、自分に苦痛を与える思考回路を終わらせることを意識的に選択します。
著者の言葉を引用します。(注:下記にある*物語作家とは、左脳の認知的な思考と解釈しました)
「脳とからだの中の細胞の99.999%は、わたしが幸福で健康で成功することを望んでいるはずです。でも、ほんの一握りの*物語作家は、わたしが喜ぶことと無条件にはつながっておらず、内なる安らぎの感覚を台無しにする可能性をもつ思考パターンばかり試そうとするのです。(中略)
否定的な脳の物語作家が占める部分は、ピーナッツほどの大きさしかないと気づいたことが、わたしをこの上なく元気づけてくれました!そういう偏屈な細胞が鳴りを潜めていたとき、人生はなんと平穏だったことか!」
ネガティブな回路をストップさせることが難しいとき、著者はその感情を体験できたことを細胞に感謝した後、下記のような方法で、思考を今、ここに戻す選択をします。
- 睡眠を十分に取る。
- 意識をからだに向け、五感で感じる感覚をじっくり味わう。
- 急ぐ必要はない、と決める。
- ものすごく楽しいこと、何かやりたいことを考える。
- できることに注目する。
著者曰く、生物学的な観点からは、幸せは右脳マインドの自然な状態だということなので、いかに右脳優位の状態を意識的に作れるかどうかで、幸せを感じられる瞬間が増えてくるようです。
上記に掲げた点は、とてもシンプルなことで、なかでも、心身が疲れていると否定的な思考パターンが作用しやすいという点は、意外に盲点かもしれないな、と思いました。
まずはよく眠って、その後五感(見る、聞く、嗅ぐ、味わう、触れる)で楽しみながらゆっくりとくつろぎ、楽しいことを考えることが大事ということを再確認して、どんな時も自分に優しく、右脳が感じる豊かな世界に自分がつながっていることを忘れずにいたいと思いました。