脳の神経可塑性から引き寄せの法則を考える~自分と現実を変えるために~

3月末にクラニオセイクラルセラピーの研修でオーストラリアに行ってきました。

 

偶然にも機内のビデオメニューに起業家のSteven Barlett氏と医師/神経科学者のTara Swart博士の対談番組があり、脳と全身の神経にはたらきかけるクラニオセイクラルセラピーの意義にも関連する、とても興味深い内容でした。

 

本日はこの対談で学んだことをシェアしたいと思います。

 

お話の要点は、脳には神経可塑性(神経の配線を変えたり、新しい経路を作る力)があるから、何歳になっても変化し成長することができる、ということです。

 

神経可塑性のメカニズムは主に3つあります。

 

1) ミエリン形成:ミエリンとは神経を保護する髄鞘で、ミエリンが十分にあるとき神経伝達が速くなる。得意なことを繰り返すことでさらに得意になるような行動に関係する。

 

2) シナプス結合:神経細胞がつながることで新しい回路ができる。努力することでできるようになる行動に関係する。

 

3) 神経新生:海馬の幹細胞が成長することで神経が作られ結合が起きる。主に成長時の記憶や学習に関係するが、大人でも神経新生は起きる。

 

 

では、どのようにすれば脳の神経を発達させることができるのでしょうか。

 

タラ博士が提案されていたことをまとめると、まずは次のような基本的なことです。

 

1) 睡眠時間を8時間とる。(できれば決まった時間に、誰かと一緒に、横向きに寝る)

 →脳細胞のターンオーバー(脳のグリア細胞が脳脊髄液中の老廃物を洗い流す)に7-8時間必要なため

 →誰かと一緒に寝ることでオキシトシン(幸せホルモン)が分泌される。

 →睡眠中にレジリエンス(精神的回復力)が高まる。

 

2) 軽めの有酸素運動をする。実際に運動できない時はイメージするだけでも効果がある。

 

3) 色の濃い(神経再生に必要なアントシアニンを多く含む)食べ物をとる。

 

4) 水を飲む。

 

5) ストレスを解消するために以下のようなことを行う。

 

①瞑想、自然に触れ合う、日常に芸術や美を取り入れる、クリエイティブな活動をする。

 →安全を感じるようになり、副交感神経が優位になる。ストレスを感じ続けるリスクについて(*注1)を参照。

 

②自分が身を置く環境を選ぶ。理由について(*注2)参照。

 

 

さらに、脳を成長させ、現実を変えていくために以下の点が重要だということです。

 

1)人生に目的を持ち、 自分を高め、人のためになるような大きな挑戦をする。

  

2) 今までの行動パターンを変えていく。

 

① 自分の行動パターンを認識する。(メタ認知)

 

② その行動パターンが生じる経緯(きっかけ、結末)や結果感じる感情を理解する。悲しい場合は、悲しみを感じ切る。

 

③ 行動パターンを変え、繰り返し試みる。

 

④ 自分の人生を変えるのは自分の責任だという意識を持って継続する。

 

→③④の段階で苦しくなって立ち止まってしまうことが多いが、継続していくと次第に脳の神経回路が変わり(新しい行動パターンの神経回路が古い回路より強化される)、経験する現実が変わっていく。

 

 

最終的にタラ博士が説いていることは引き寄せの法則に近い内容でした。

 

つまり、現実を作り出しているのは自分の思考であり、 思考回路が変われば(不安な状態から信頼している状態に変われば)現実が変わるということです。

 

具体的な方法として、思考が生み出す、自分に対する言葉がけを改め、ポジティブな言葉がけ(大丈夫などのアファメーション)を繰り返すことを提案されていました。

 

例えば、「私には~が必要」という言葉は、不足感から生じているので避けるようにするなどです。

  

そして、以下のようなステップで現実化したいことをイメージします。

 

①何を望むか明確にする

 

②5分座って望んだことを想像する(感じる)

 

③既に叶ったと思って感謝する

 

 

最後に、神経系とストレス反応についてタラ博士が述べていた内容から考察します。

 

タラ博士のお話によると、脳のストレス反応は世代間で遺伝したり、受精時や胎内で特定の遺伝子が発現するケースがあるようです。

 

そのような根深いストレス反応や、習慣化した行動パターンを変えていくことは容易なことではないとタラ博士も話されていましたが、それでも意思を持って変えることが可能だというお話は勇気づけられる内容でした。

 

また、神経系に記憶されているものは必ずしもネガティブなものだけではなく、これまで経験した知恵が蓄えられている、というお話も印象的でした。

 

からだは、大脳皮質→大脳辺縁系→脳幹→脊髄→腸神経のように神経でつながっているため、からだの声を聴くように心がけることで、直感=肚で決める力も培われるようようです。

 

神経系は生物が生存するために進化してきた機能であり、一見ネガティブに見えるストレス反応は生存するために生じていることです。

 

そこで、私たちがどうなりたいかということを意識し明確化することで、ストレス反応に左右されている人生を変えることも可能なのだと思いました。

 

そのためにはまず、日ごろからストレスを減らすように心がけることが大事であり、セラピーがそのためにお役に立てるものであることを再認識しました。

 

当サロンでご提供している、クラニオセイクラルセラピー、Metamorphic Technique、ブレインジムのいずれにも共通するテーマは、神経系に働きかけることです。 

 

神経系を落ち着かせ、新しい目標、目指す方向を意識していくことで、人生を変容させることができることをセラピーを通してこれからもお伝えしていきたいと思いました。

 

*注1)ストレスを感じ続けるリスクと病気との関係

ストレスを感じるとコルチゾール(副腎皮質ホルモン)の分泌量が高まり、血流にのって全身へ広がる。

睡眠障害、消化不良、お腹周りの脂肪の増加、風邪が治りにくい、乾燥肌などの症状が現れる。

ストレスが高いままの状態が続くと、脳が生存の安全が脅かされている状態だと判断し、コルチゾールの分泌が続く。

臓器等に炎症が生じ、病気が引き起こされる。

 

*注2) ストレスは以下のような仕組みで伝播するため、自分が身を置く環境を選ぶ必要がある。

 

コルチゾールなどのホルモンは汗として皮膚から分泌されている。ストレスが高い人の傍にいる人は、分泌されたホルモンを見えない形で吸収してしまうため、ストレスが伝染する。

特に、ストレスは立場が高い人から低い人へ伝播するため、例えば、職場で上司が高いストレスを感じていてもその状態を隠していたり自覚していなかったりすると、部下はその悪影響に晒される可能性が高い。